【群れ:パック】 

✓パックとは

ドールは単独でいることはほとんどありません(Johnsingh 1982)。彼らの群れはパック(pack)と呼ばれます。パックとは、雌雄ペアとそのこどもを中心とした群れのことです。

 

パック内には厳しい社会的順位が存在し、通常はα雄とα雌と呼ばれる最優位の個体のみが繁殖し、その他の個体は共同で育児や狩りを行います

 

✓パックの大きさと性比 

パックは平均5頭から11頭(平均8.3頭、最小2頭、最大15頭)からなり、仔を含むと平均16頭(最小13頭~18頭)と報告されています(Johnsingh 1982)。

 

パックの大きさは激しく変動することが知られています(稀に20~40頭)。その原因は、パックの一部個体が11月に分散する(Johnsingh 1982)、伝染

病にかかったりトラ(例えば、KrupakarとSenaniの撮影した“Wild Dog Diaries”など)やヒョウ(例えば、Johnsingh 1982)による攻撃を受けたりして死ぬ、などが考えられます。

 

パックの成体性比は雄に偏っています。これは雄がヘルパーとして出自パックに遅くまで留まり、雌が早く分散するためであると考えられています(Venkataraman 1998)。

 

【行動圏】

行動圏の大きさは季節によって異なり、非繁殖期に大きくなり、乾期(南インドでは 3月~5月)に制限されます(Fox 1984)。行動圏の大きさは15頭のパックで30-40km²と推定されており、繁殖期には約10km²に縮小されるという報告があります(Johnsingh 1982:直接観察、餌死体の位置、痕跡やにおいの有無による推定、コアエリアは 20km²)。

 

各パックのコアエリアは重複せず(単独雌の行動圏は他のパックのものと重なる)、境界付近には糞の共同的なマーキングが見られます(Johnsingh 1982)。

 

【繁殖】

✓繁殖期

発情期は9月から12月(Sosnovskii 1967, Davidar 1974)で、2か月の妊娠期間を経て(Burton 1940, Sosnovskii 1967)、11月から4月(12月がピーク)の間に出産を迎えます(Sosnovskii 1967, Davidar 1975)。

 

繁殖するのはα雌と呼ばれる最高位の雌のみですが、常に同じメスが繁殖しているのかどうか明らかになっていません(Johnsingh 1982)。

 

✓交尾

交尾時間は7分です(Davidar 1974)。

 

✓巣穴

出産前に巣を確保し、一繁殖期の間に巣の場所を変えることが知られています(Johnsingh 1982)。

 

通常、巣穴自分では掘らず(Johnsingh 1982、今泉(2009)の方は自分でも掘るとしている)、多くは他の動物の作った巣穴(Johnsingh 1982, Fox 1984)、岩の割れ目や洞穴など(Fox 1984)を利用することが知られています。

 

✓仔の数と成長

一腹仔は平均 8頭(最小6頭、最大9頭)です(Johnsingh 1982)。著者の観察では、最大10頭です。

 

仔は約生後2週で目が開き(今泉 2007)、生後3週ほどで巣から顔を出すようになります(Johnsingh 1982)。

 

生後8週頃まで授乳が見られますが(Johnsingh 1982)、この頃から肉を口にするようになります(今泉 2007)。

 

巣穴にいるのは生後10-11週(Johnsingh 1982)まで、その間には、母

親は狩りに出掛けずに巣に留まる見張り役に守られ、残りの成体が狩りをして得た肉を胃に入れて運び、巣に戻ってから吐き戻して仔や母親に与えます(Johnsingh 1982)。そのうちに仔を餌のところまで連れて行くようになります(Johnsingh 1982)。

 

6か月頃までは餌を優先的に食べられ、その後はパックに加わって行動するようになります(Johnsingh 1982)。生後7か月(Johnsingh 1982:生後6-8か月)ほどで狩りにも参加するようになります。そして生後1年で性成熟します(Burton 1940)。

 

なお、飼育下での寿命は15-16年です(今泉 2007)。 

 

最終更新日:201519